「準硬式野球」という言葉を聞いたことがありますか?
硬式でもなければ軟式でもない、野球好きな方でも聞き慣れない言葉かもしれません。主に大学でプレーされている準硬式野球(以下準硬式)、実はこれまで何人もの選手がプロからドラフト指名を受けています。
本記事では大学時代に準硬式でマネジャーをしていた筆者が、硬式・軟式との違いはもちろん、準硬式の魅力についても記していきます。硬式・軟式と比べるとまだまだマイナーな準硬式ですが、少しでも興味を持っていただければ幸いです。
目次
硬式でも軟式でもない「準硬式」
ボールの違い
準硬式では軟式H号という種類のボールを使用します。ゴム製の見た目は軟式、でも触ってみたら硬さは硬式、というのが大きな特徴で、硬式と軟式の中間のようなボールです。中身は硬式なので、バットにボールが当たった時の打球音は硬式と同じ。死球などで体にボールが当たった時は硬式同様、かなり痛いです。打球の飛び方や跳ね方にはやや特徴がありますが、硬式経験者ならすぐに慣れるレベルの違いです。
バットは金属も可
硬式や軟式と大きく違うのはボールだけで、バットは高校野球で使用する金属製や大学の硬式で使う木製、どちらを使用してもいいことになっています。準硬式が盛んな大学ではほとんどの選手が金属バットを使っています。
ルールは?
ルールも硬式と同じです。使う道具や使用する球場も硬式と同じなので、初めて準硬式を見る方は硬式と見間違えてしまうかもしれません。ボール以外は硬式と変わらないので、硬式経験者は始めやすい競技だといえます。
誕生の歴史
軟式ボールとは違う、もっと硬式に近い感覚で使えるボールとして開発されたのが準硬式球。1951年から全日本大学軟式野球大会の公式球として使用されるようになり、大学軟式野球=準硬式野球が定着していきました。その名残として全国優勝経験のある関西学院大学(兵庫)では2010年頃まで準硬式野球部が部名を「軟式野球部」と名乗って活動していました。かつては社会人の準硬式大会も開催されていましたが、現在は全国規模の大会は行われておらず、主に中学生や大学生を中心にプレーされています。
学生スポーツとして定着
中学生
大阪の一部の中学校では準硬式球を使って野球部の活動が行われています。準硬式球を使用した大阪中学校優勝野球大会は1950年から続く大会で、かつては岡田彰布氏(現阪神タイガース監督)や桑田真澄氏(現読売ジャイアンツ2軍監督)も出場しました。
大学生
準硬式が全国的にプレーされているのは大学です。北海道から九州まで9つの連盟に分かれ、それぞれの地区で春と秋にリーグ戦が繰り広げられています。大学では準硬式野球部は「じゅんこう」と呼ばれています。
大学の準硬プレーヤーたちが目指す大舞台は毎年夏に開催される全日本準硬式野球選手権大会、通称「全日」です。春のリーグ戦、そして地区大会を勝ち抜いた強豪校ばかりが集まり、日本一の座を競います。全日と同じ時期に開催されるのが清瀬杯全日本大学選抜準硬式野球大会、学生たちの間では「清瀬」と呼ばれています。全日に進むための各地区大会で惜しくも敗れた大学が出場するのがこの清瀬杯。裏全国大会ともいわれており、全日に出られなかった選手が悔しさを晴らす場にもなっています。
元甲子園球児がいる大学も
スポーツ推薦などでの入部者が多い硬式と比べて、準硬式のレベルは大学によってバラバラです。高校時代に甲子園で活躍したような有名選手を推薦で集めている大学もあれば、大学から野球を始めましたという選手がいる学校も。大学によって指導者もいたりいなかったりで、選手が自ら練習メニューを考えて活動している学校も珍しくありません。自主性が重視されることから、大学で準硬式に入って自分の課題と真剣に向き合い、ぐんと能力を伸ばす選手も多くいます。
なぜ準硬式を選ぶのか
全日本大学準硬式野球連盟が目標として掲げているのは「アマチュアスポーツの精神に則り学業との両立を目指す」こと。学校にもよりますが、大学の硬式は強豪になればなるほど練習も競争も厳しくなります。平日も休日も関係なく練習があり、大学の授業にもほとんど出られないといった話も。
その点準硬式は「学業優先」の大学が多く、筆者が所属していた学校も平日は授業への出席が優先で、練習は授業がない部員だけで行っていました。週末の練習後にはアルバイトをする時間もあり、部活に所属しながら学業も大学生活も両立させることができました。サークルではなく部活なので「ガチ」でやってはいるけど「ガチガチすぎない」ところが、準硬式が選ばれるひとつの理由だと考えます。
東西対抗日本一決定戦甲子園大会
大学準硬式野球連盟設立75周年記念として、2023年11月14日に甲子園球場で準硬式の東西対抗戦が行われます。準硬式の知名度向上のため、昨年第1回大会が行われる予定でしたが残念ながら雨で中止に。
今年満を持して初開催されます。北海道から東海までを東チーム、関西から九州までを西チームとし、書類選考などを経て選ばれた選手たちが日本一を懸けて聖地でプレーします。大学の硬式ではリーグ戦の会場として使われている甲子園ですが、準硬式の試合で使用するのは初めて。プレーする選手たちはもちろん、準硬式野球界にとって歴史的な一日になるに違いありません。
準硬式出身の主なプロ野球選手
大曲錬投手(西武ライオンズ)
福岡大でプレーし、大学で才能が開花。在学中さまざまなタイトルを獲得し、2020年ドラフト5巡目で西武に入団しました。2023年シーズンは初めて開幕1軍を勝ち取り、プロ入り後最多となる10試合に登板。課題の制球力を磨き、24年シーズンこそ勝利の方程式入りを狙います。
高島泰都投手(2023年ドラフトでオリックスから5巡目指名)
北海道・滝川西高時代は2番手投手だったものの、明大の準硬式に入部してから急速がアップ。卒業後は社会人の王子で再び硬式を握り、社会人1年目で見事プロ入りを勝ち取りました。
硬式→準硬式→硬式と珍しい球歴の持ち主で、金属バットを使用していた準硬式時代の経験が、硬式に再転向してから生きたそうです。また大学時代は野球と並行してアルバイトにも励み「いろんな経験ができたのはよかった」と語っています。プロでどんな活躍を見せてくれるのか楽しみな選手です。
青木勇人氏(西武→広島、現西武コーチ)
準硬式出身者の中で最もプロで結果を残した選手です。同志社大の準硬式から1999年ドラフト6位で西武入り、2006年に広島に移籍し10年に引退するまで11年間で9勝を挙げました。現在もコーチとして西武に所属しており、準硬式出身者を代表する存在です。同志社大時代には全日制覇も果たしています。
坂本工宜投手(元巨人)
関西学院大学から2016年ドラフトで巨人から育成4巡目で指名されました。関西学院高時代は外野手だったもののレギュラーにはなれず、大学の準硬式で投手に転向し力を伸ばした選手です。育成3年目の19年に支配下登録を勝ち取り1軍デビューを果たしますが、シーズン終了後に戦力外通告。その後はNPBへの復帰を目指し、独立リーグなどでプレーしています。
まとめ
まだまだマイナー競技でありながら、コンスタントにプロ野球選手も輩出している準硬式。ボールが違うだけで野球のルールさえ分かれば楽しめます。「準硬式って何?」「硬式とどう違うの?」「何で硬式じゃなくて準硬式?」筆者も大学在校時、何度も何度も聞かれてきました。本記事がその質問に対する答えとなり、準硬式って面白いかも?と思ってもらえるきっかけになればと思います。
<参考記事>
準硬式野球とは | 全国大学準硬式野球連盟
オリックス・バファローズ
日本野球機構 NPB
硬式に再転向→ドラフト候補に浮上 150キロ右腕を進化させた“準硬式の利点” | Full Count
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