冬季オリンピックでも高い注目を集める「スピードスケート」を徹底解説

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冬季オリンピックでも高い注目を集める「スピードスケート」を徹底解説

2024/01/24

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2026年ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックでも、男女ともに日本選手の活躍が期待されるスピードスケート。

 

短距離種目での強さはもちろんのこと、注目すべきは「団体追い抜き(チームパシュート)」です。一糸乱れぬスケーティング動作と滑らかな先頭選手の交代を得意としており、世界の強豪国を寄せ付けない強さがあります。

 

今回は、そんな注目度の高いスピードスケートをより楽しく観戦するための知識や見どころ、スピードスケートで使用するリンクの特徴などについてご紹介します。

スピードスケートの基礎知識

スケート発祥の地はオランダと言われており、13世紀には村から村への移動手段として、凍った運河で使用されていました。スケートがイギリスに伝わると、クラブや人工リンクが作られ、冬の移動手段からスポーツ競技として発展していきました。

 

スピードスケートがオリンピック種目として初めて採用されたのは、1924年にシャモニーで開催された第1回冬季オリンピックです。

 

当初は男子競技のみでしたが、1932年にレークプラシッドで開催された第3回冬季オリンピックより女子が公開競技として加わりました。

 

なお、正式種目として採用されたのは、1960年にアメリカのカリフォルニア州で開催されたスコーバレーオリンピックとなります。

 

競技種目は、男子は短距離種目が500m、1000m、 中距離種目が1500m、 長距離種目として5000m、10000mがあります。女子は短距離種目が500m、1000m、 中距離種目が1500m、長距離種目は3000mと5000mがあります。

 

この他にも、​2006年トリノ大会から採用されている、3人1組で男子は8周、女子は6周滑る「団体追い抜き(チームパシュート)」や、1周400mのコースを16周し、4周ごとの通過順位とゴール時の順位に応じたポイントの合計で争う「マススタート」もあります。

 

なお、男子500mの世界記録は、パベル・クリズニコフ(ロシア)が2019年3月9日に記録した33秒61で、時速50Kmを超える速さで氷の上を滑っている計算になります。氷の上を乗用車と同じくらいのスピードで駆け抜けていると考えると驚きです。

 

スピードスケートは、号砲でスタートします。なお、 号砲よりも早くスタートすることを「フライング」と言い、 1度目でどの選手がフライングしていても、 2回目のスタートでフライングをした選手が失格となります。

 

スピードスケートにおいてスタートは重要で、とくに短距離種目ではスタートでの一瞬の遅れが、勝敗を左右します。選手は全神経を研ぎ澄ませ、フライングにならないギリギリのタイミングでスタートを切ります。

スピードスケートの豆知識

スピードスケートの魅力は氷の上を駆け抜けるスピード感ですが、より深く知ることで違った視点で楽しめる知識もあります。今回はそんな豆知識を3つ紹介します。

スピードスケートの減速要因はほぼ空気

スケーターにとって最も大きな要素は空気抵抗です。

 

そのため、スケーターは抵抗を小さくしようと、より低い姿勢で滑走します。一度加速すれば、極力減速しないでゴールすることが重要になるのですが、距離が長くなるほどスケーターの脚にも疲労はどんどん蓄積されていきます。

 

スピードスケート選手は瞬時に加速する瞬発力に加え、空気抵抗を受けないよう低い姿勢を維持するための持久力が必要になります。

脚一本にかかる負荷は、100kg以上!

レース中、スケーターは基本的にほとんどの時間が片足となり、高速カーブでは遠心力によって、体重をはるかに超える負荷がかかります。

 

低い姿勢を維持し、厚さ1mm程度のブレードで支えるとなれば、脚にかかる負荷は相当な重さになります。スケーターはスムーズかつ軽やかに、カーブを減速しないよう処理していきますが、同時に、見えないところで複雑な作業を行なっているのです。

 

長距離種目の楽しみ方

短距離と比べるとスピード感はゆったりしていて、決着がつくまで時間に余裕がある長距離種目ですが、スピードスケートの醍醐味が詰まっています。長距離種目はスピードスケートのなかでも最も面白い種目とも言われています。

 

長距離種目の楽しみ方は、毎周のラップタイムを確認し、最終フィニッシュタイムを予想することです。そして、通過タイムを他の組と比較し勝敗を予想します。

 

ラップタイムが上がったり下がったりし、抜きつ抜かれつの勝負が繰り広げられると、目が離せなくなりますよ。

スピードスケートの見どころ

スピードスケートは種目によって注目すべきポイントも変わってきます。ここでは種目ごとの観戦ポイントを紹介します。ぜひ観戦時の参考にしてみてください。

個人種目

基本的に空気抵抗を少なくして滑り、淡々とタイムを狙う種目ですが、長距離では駆け引きも見られます。

 

試合のなかで最初の方の組で好タイムを出せば、後半の組にプレッシャーをかけることになります。一方後半の組は、それまでのタイムを見てラップタイムを設定し、レースに臨めるメリットがあります。

団体追い抜き(チームパシュート)

3人1組となりますが、空気抵抗の大きい先頭を交代するタイミング、回数、技術がポイントになります。

 

いかに選手同士が近距離で滑ることができるか、スムーズに先頭交代できるかが見どころです。タイムは最後尾の選手が基準となるため、3人同時にゴールするのが理想と言えます。

マススタート

16人が一斉にスタートして合計16周で争うポイントレースです。上位3人はゴール順が順位となりますが、4位以降は中間・最終ポイントでの得点順となり、得点が同じ場合はタイム順で順位が決まります。

 

中間ポイントの前やゴール直前は激しいスプリント勝負となり、転倒や接触も多くなります。スローペースで滑っているときのポジション取りや、仕掛けるタイミングなどレースを読む力、駆け引きが勝敗につながります。

 

スピードスケートリンクの特徴

 

氷の上を厚さ約1mmの刃に乗って滑るスピードスケートという競技を可能にするリンクとはどのようなものなのでしょうか。ここではスピードスケートで使用するリンクの特徴について説明します。

 

リンクのサイズは、1周400mで内側半径26m、レーン幅4mです。ストレートの部分は「ホームストレート」「バックストレート」に分かれ、選手は1周ごとにバックストレートでアウトコース、 インコースを交代します。 

 

さらにアウトコースとインコースの選手が入れ替わるバックストレートエリアを「クロッシングゾーン」と呼びます。クロッシングゾーンでは、 アウトコースからインコースにレーン変更する選手が優先です。

 

もし、 インコースの選手が アウトコースから入ってきた選手を優先しなかった場合、 選手走路妨害として失格となります。競技種目ごとにスタートラインとフィニッシュラインが異なるのもスピードスケートリンクの特徴と言えます。

国内の代表的なスケートリンク

 

日本国内には、オリンピックやワールドカップでも使用される世界基準のスケートリンクが存在します。今回は代表的な2施設について紹介します。

長野市オリンピック記念アリーナ(愛称:エムウェーブ)/長野県

正式名称は「長野市オリンピック記念アリーナ」です。1998年の長野オリンピックのスピードスケート会場として建設されました。

 

アリーナの断面がアルファベットの「M」に似ていることから「エムウェーブ」の愛称で親しまれています。

 

屋内型施設としては日本国内初、400m標準ダブルトラックの国際スケート連盟公認リンクです。

 

スケートリンクは秋から冬にかけての営業となり、毎年10月にはワールドカップ代表選考会を兼ねる「全日本距離別選手権」が開催されます。

 

オフシーズンは、プロレス、大相撲、自動車の展示会など多種多様なイベントに貸出されています。

帯広の森スピードスケート場(明治北海道十勝オーバル)/北海道

長野市オリンピック記念アリーナに次ぐ屋内スピードスケート場として開場。現在はスケート(スピードスケート)のナショナルトレーニングセンター(日本のトップレベル競技者用トレーニング施設)に指定されています。

 

スピードスケートの大会開催、トレーニングはもちろんのこと、施設の中央ではフットサルやテニスを楽しむことができ、外周にはランニングコースも設定されています。

 

2009年の開場とともにネーミングライツ契約が締結され、「明治北海道十勝オーバル」と呼ばれています。

 

毎年ワールドカップも開催され、世界トップクラスの滑りが見られる施設となっています。

 

まとめ

今回は、スピードスケートの歴史や見どころ、スピードスケートリンクについて紹介しました。

 

2026年にはミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピックがあります。日本のスピードスケートでは男女とも、世界に通用する実力をもった選手がたくさんいます。

 

ぜひこの記事をきっかけにスピードスケートに注目していただければと思います。

 

 

<参考記事>

公益財団法人日本スケート連盟

 

公益財団法人日本オリンピック委員会

 

特集 リンクづくりに200時間!?フィギュアを支える氷のプロ丨NHK sports

 

 

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Engate Media編集部

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Engate Mediaの編集部です。スポーツ業界やスポーツを支える業界で活躍するキーパーソンのインタビュー記事やスポーツ業界の最新ニュースをお届けします。公式Twitter: @EngateInc

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