楽天イーグルス・最年少社長2年目の挑戦(前編):野球を通して、多くの 人に楽しみを提供していく

インタビュー

楽天イーグルス・最年少社長2年目の挑戦(前編):野球を通して、多くの 人に楽しみを提供していく

2023/03/01

  • インタビュー

東北楽天ゴールデンイーグルス(株式会社楽天野球団) 代表取締役社長の米田陽介さんは現在39歳。球団史上最年少。昨年1月に異例ともいえる抜擢で社長に就任し、今年は2年目の挑戦になります。就任から1年を振り返っていただき、今後どのように球団経営に取り組んでいくのかを聞きました。(2回シリーズ・前編/取材・文=小林謙一)

異例の抜擢、球団に新しい風を吹き込む

米田さんは1983年大阪府生まれ。2007年に楽天株式会社に入社すると、2019年に同社執行役員、同年11月には楽天モバイル株式会社執行役員に。2021年に株式会社楽天野球団の取締役副社長に就くと、2022年1月1日に39歳で代表取締役社長に就任しました。

 

異例の若さで球団社長に抜擢された米田さんですが、もともとはサッカー少年だったといいます。

 

「幼いころは野球好きな父親に連れられて、地元の近鉄バファローズを藤井寺球場に応援に行っていましたね。少年野球もやっていましたが、私にはセンスがなかったようで…(笑)。小学3年生のときにJリーグが誕生して、かっこいいなと思ってサッカーを始めました。もともと足が速かったこともあって、なかなか活躍しましたよ」

 

楽天に入社後はインターネット通販の「楽天市場」や通信事業の「楽天モバイル」に携わるなど、それまでスポーツに関わる仕事をしてきたわけではありませんでした。それもあって、社長抜擢は野球界のみならず世間からも大きな注目を集めます。

 

「オーナーの三木谷さんから、新しい挑戦をしてみないかと言われて、『がんばります!』と答えはしましたが、それが楽天イーグルスの球団社長だとわかって、本当に驚きましたね」

他県のファンからの応援も熱いイーグルス

好立地の楽天モバイルパーク宮城。試合日はファンで溢れている
好立地の楽天モバイルパーク宮城。試合日はファンで溢れている

楽天イーグルスの本拠地は、宮城県仙台市。東北唯一のプロ野球球団ということもあって、東北6県全体から「わがチーム」として愛されています。仙台駅から地下鉄で2駅という好立地の楽天モバイルパーク宮城には、他県からも多くのファンが応援に訪れます。

 

米田さんは以前楽天市場で東北エリアを担当していたこともあり、現地の方々との交流もあったそう。東北の人々は「胸の内に熱いものを秘めている」と話します。

 

「東北の人は一度好きになると熱が冷めにくいのが特徴ですね。ファンになっていただくまでに時間がかかる傾向はありますが、ひとたびファンになると一途で、なかなか浮気しないでいてくれます(笑)。『熱しにくく冷めにくい』といえるかもしれませんね」

 

応援のスタイルにも地域柄が出るといいます。関西では、“愛のある”ヤジが盛んに投げかけられますが、楽天イーグルスの観客からは、ヤジが飛ばされることは多くはありません。

 

「楽天イーグルスのファンは、チームに寄り添ってくれる人が多いですね。目先の勝ち負けに一喜一憂するだけでなく、温かい目でチームや選手を見守ってくれるんですよ。でも、故星野仙一元監督は『もっとヤジってほしい!』とおっしゃっていたそうですよ」

 

プロ野球チームにとって、ファンやサポーターの厳しい目は、時として襟を正すきっかけにもなります。ヤジを飛ばすことの賛否は別として、心優しいファンに支えられてきたチームに新しい刺激を与えるために、米田さんは抜擢されたのかもしれません。

 

球団社長の初年度ということで、あらゆることが初めての経験だったといいます。

 

初めて臨んだドラフト会議については、「初めてくじも引きましたが、本当に緊張しました。それは、スカウトを担当するスタッフたちにとっても、勝負の1日なんです」と心の内を明かしてくれた。

 

プロ野球の「ドラフト」というと、プロを目指す選手たちにとって運命の1日となりますが、それは裏方で働く人たちにとっても同様です。球団がどんな選手を指名するか、その情報を集めるのがスカウトの役割です。甲子園には出場できなかったけれど地方大会で活躍した選手を探し出したり、無名だけれど将来性を感じさせる選手を発掘したりと、「情報戦」は激化しています。

 

「スカウトたちが全国に足を運び、炎天下に何試合も観戦して、試合のない日は練習を見に学校を訪問したりして集めた情報を元に、ドラフトで指名する選手が決定されます。そんな血と汗と涙の結晶が報われるかどうかの1日なんですね。そんな多くの人の気持ちや想いのすべてがのったくじ引きですから、おのずと大きなプレッシャーがかかります」

野球に興味のない人もスタジアムで楽しめるように

2年目に挑む米田社長「10年ぶりに優勝旗を東北に」
2年目に挑む米田社長「10年ぶりに優勝旗を東北に」

それでは、2023年はどのように球団経営にあたっていくのでしょうか。米田さんはまず、チームの目標を教えてくれました。

 

「2013年に球団初の日本一に輝いてから、今年で10年になります。チームとしては、10年ぶりに優勝旗を東北に持ってきたいですね」

 

一方、球団経営についてはまだまだ多くの課題があると話します。

 

「球団の経営課題としては、コロナ前の水準までスタジアム来場者数を戻したいと思います。新型コロナウイルス感染拡大前の2019年に比べて、昨年は来場者数が70〜80%まで回復してきました。しかし、まだ20〜30%のお客さまが戻っていただけていません」

 

コロナ禍から日常を取り戻そうと、社会は動き始めています。しかし、まだまだ完全に回復しきれていないのが現状です。

 

「私自身、昨年は球団経営に携わる1年目でしたから、正直手探りで進めてきた部分もありました。ひと通り経験してみてわかってきたこともあるので、今年は『自分が観客だとしたら、どんなふうに試合を楽しみたいか』という目線で、さまざまな仕掛けを考えてみました」

 

いま野球界では、プレー人口が減少していることが問題視されています。かつては、ほとんどの子供が野球をプレーしたことがありましたが、現在は他のスポーツをするという選択肢も増えました。また、テレビのゴールデンタイムに野球が中継されることも少なくなり、YouTubeなどのさまざまな動画サイトやSNSも普及して、エンターテインメントが多様化しています。

 

「プロ野球球団は、野球に興味のない人にも楽しんでもらう必要が出てきているわけです。楽天イーグルスは創設18年目を迎えましたが、ありがたいことに、家族ぐるみで楽しんでいただけているファンが多くいます。それは、これまでの球団方針としてファミリーで楽しんでもらおうという積み重ねの賜物なのですが、これからはより一層の楽しさを提供していきたいと思っています」

 

それでは、2023年はどのように球団経営にあたっていくのでしょうか。米田さんはまず、チームの目標を教えてくれました。

この記事を書いた人

小林 謙一

小林 謙一

企画制作プロデューサー・編集者・ライター。企画の立案から実制作のプロデュース、紙媒体の編集、Webメディアでのライティングなどを主に活動。「面白くて役に立つ」をモットーに制作を手がける。

関連する記事

その他注目記事

  1. マインドフルネスに分子栄養学 西村GMはなぜ導入したか?
  2. 「選手の顔写真入りマカロン」がファンに届く! アスリートとファンを結ぶ「甘く美味しい」絆
  3. 「日本を代表するポイントガードに」 バスケ河村勇輝が歩む”世界と戦うための道”

人気のタグ