日本の男子バスケットボールのプロリーグ、「Bリーグ」では、高校生や大学生たちが卒業を前にプロの世界を経験できる制度として、「特別指定選手」という契約形態があります。これまで、主に大学卒業を控えた選手たちが契約を結び、その後のプロ生活に向けた第一歩を歩んできました。
2024-25シーズンにおいても、特別指定選手は大きな注目の的となっています。この記事では、制度や注目選手について紹介していきます。
目次
Bリーグの「特別指定選手」とは?
まずは「特別指定選手」の制度について説明していきましょう。この制度は、Bリーグの全体のルールを定めた「Bリーグ規約」の一部である「選手契約および登録に関する規程」に記されています。
まず、大きな条件としては、日本人選手を対象とした制度であることです。例えば、海外の大学や高校で活躍する外国人選手や、日本の高校や大学への留学生の選手を、特別指定選手の枠を使ってチームに入団させることはできません。
特別指定選手の対象は?
特別指定選手は、満22歳以下の選手を目的とした制度です。このため、高校や大学など、Bリーグではない場所でプレーをする選手たちを対象とした制度設計がされています。大きな括りとして、特別指定選手には「アマチュア」と「プロ」、2つの契約制度が作られていて、このうちアマチュアでの契約となった場合は、所属する高校や大学のバスケ部に籍を置いたまま、Bリーグに挑戦ができます。特別指定選手としての契約期間が終了すれば、そのままそれぞれの学校に復帰できる仕組みです。
一方で、「特別指定でのプロ契約」となった場合は、大学や高校のバスケ部に所属していない、つまり退部や休学・退学していることなどが条件となります。「プロ」という契約が示す通り、チームから報酬を得てプレーすることができます。
いわゆる「乱獲」はできない
通常、Bリーグチームでの選手契約人数の上限は13人となっています。しかし、特別指定選手はこの13人の枠とは別に契約をすることができます。ただし、1チームにつき、特別指定選手は2人までと制限が付けられています。
Bリーグ・2024-25シーズンの特別指定選手たち
Bリーグの2024-25シーズンはまだ開幕前なのですが、すでに何人かの選手が特別指定選手制度を使っての契約が発表されています。大きな期待も見えるだけに、ここで紹介していきましょう。
菅野ブルース(千葉ジェッツ)
アメリカで生まれ、その後は岩手県で育った菅野ブルース選手は、八村塁選手を育てた仙台大学附属明成高校に進み、その後アメリカ最高峰の大学リーグ・NCAA1部のステットソン大学でプレーをしていました。
身長200cmながら機敏さを活かしたプレーが持ち味で、ドリブルでゴール下まで一気に切れ込める突破力が武器でもあります。千葉ジェッツとはプロ契約を結んでいて、日本代表の富樫勇樹選手や渡邊雄太選手が並ぶスター軍団で、成長と印象をどこまで残せるかが注目されます。
平寿哉(シーホース三河)
平寿哉選手は、シーホース三河のU15(15歳以下=中学生年代を対象としたユース組織)チームの出身で、チームの本拠地である愛知県刈谷市で生まれ育ちました。高校時代は富永啓生選手の母校である桜丘高校の司令塔としてプレーし、その後はアメリカ留学に向けた準備を進めていました。
しかし、進学先が未定だった中で、三河の特別指定選手としての契約を勝ち取り、三河のユース出身選手としては初のトップチーム登録となります。地元出身選手が、プロの舞台で花開くことに期待したいですね。
大庭圭太郎(滋賀レイクス)
大庭圭太郎選手は、バスケットボール熱の高い、福岡県福岡市の出身です。九州共立大学在学中に開催された全日本大学バスケットボール新人戦(新人インカレ)で、関東の強豪校を相手に30得点を記録して大きな注目を集め、その後、大学バスケ部を退部してのBリーグ挑戦を決めました。
2023-24シーズンは、茨城ロボッツと特別指定選手契約を結び、スピードとフットワークを活かしたディフェンスの強さをプロの舞台でも見せつけました。今シーズンは、B1昇格を果たした滋賀へと移籍し、さらに来季以降の複数年契約も決まりました。2年目となるプロの舞台で、さらなる進化を遂げたいところです。
岡部雅大(京都ハンナリーズ)
茨城県出身の岡部雅大選手は、法政大学に在学中の選手ですが、4年生としてのシーズンを迎える前に京都への加入を決断し、プロ契約の特別指定選手としてプレーすることになりました。
身長は184cmと、バスケットボールの世界では決して大柄ではありませんが、ダンクシュートもできるという身体能力が大きな武器です。在籍当時、関東大学リーグの2部に所属していた法政大では下級生から試合に絡み、3年生で迎えた2023年シーズンでは1部昇格まであと一歩のところまでチームを押し上げました。大学を離れてのプロ挑戦の意義を、自らのプレーで証明していきたいところです。
特別指定選手として動向が気になる選手たち
特別指定選手は、高校や大学でプレーする選手たちがプロチーム・プロリーグであるBリーグの世界を経験できる制度のため、ここでの経験を大学へと持ち帰ってさらなる成長を目指す選手たちもいます。2024-25シーズンでの動向は明かされていないものの、これまでの特別指定選手として活躍し、今後が期待される選手たちも、合わせて紹介しておきましょう。
淺野ケニー(専修大学)
淺野ケニー選手は、高校バスケットの名門。京都・洛南高校から専修大学に進み、これまでに2シーズン特別指定選手として活動しています。2022-23シーズンには京都ハンナリーズで、2023-24シーズンには三遠ネオフェニックスでプレーしました。三遠でのプレーとなった昨シーズンには、プロの舞台で1試合10得点を記録するなど、すでに実力は証明済み。
198cmの身長を活かした、打点の高い3ポイントシュートも魅力でもあり、この冬にどのような進路を選ぶかが注目の選手です。
菅野陸(山梨学院大学)
菅野陸選手は、18歳以下の日本代表として大きな注目を集めている選手です。福島県二本松市の出身で、中学時代はBリーグの福島ファイヤーボンズのU15チームで活躍。帝京大学安積高校に在学していた2023-24シーズンに福島の特別指定選手としてプロの世界を学びました。
山梨学院大学に進学した直後に行われた関東大学バスケットボール新人戦では得点王を獲得するなど、今後の将来が楽しみな存在と言えそうです。
米須玲音(日本大学)
京都・東山高校在学中の2020-21シーズン、日本大学に進学した2021-22シーズンと、2シーズンにわたって川崎ブレイブサンダースの特別指定選手となっていたのが、米須玲音選手です。大学進学後に肩や膝など、様々な大ケガを負って欠場が長引きながらも、コートへの復帰を諦めない姿も注目を集めました。
大学の最終学年で迎えた2024年の関東大学リーグで、司令塔としてコートに復帰し、鮮やかなパスセンスやシュート力などを発揮しています。リーグ戦、さらにはその後に待ち受けるインカレを経て、米須選手がプロへの進路をどう目指すか、目が離せません。
今後のBリーグと日本選手の飛躍に期待大
今回は、Bリーグの契約制度である「特別指定選手」について解説しました。
学生とプロとの両立、あるいは若い選手のプロ挑戦などを後押しする制度でもあり、河村勇輝選手や西田優大選手など、この制度でBリーグに挑戦した選手が、その後日本代表になるなど、トップ選手としての第一歩としても注目されるとも言えます。今シーズンのBリーグで、どんな選手がこの制度を使うか、ぜひ注目して見てください。
<参考記事>
千葉ジェッツが菅野ブルースとプロ契約…明成出身SG、昨季はNCAAステットソン大学でプレー | BASKETBALLKING
特別指定選手加入のお知らせ(平寿哉選手) | シーホース三河
桜丘高卒業のバスケ選手2人が米国へ | 東愛知新聞
大庭圭太郎選手 2024-25シーズン特別指定選手として加入のお知らせ | 滋賀レイクス
#18 大庭圭太郎 ~扉を開いていく~ | ROBOTSTIMES
岡部雅大選手 特別指定選手のプロ契約として加入 | 京都ハンナリーズ
当事者意識でつかむ1部昇格へのチャンス | バスケットボールスピリッツ
【バスケ】エグいダンクで会場を湧かせた183cmのガード!!※最後に”おまけ”あります。|11 岡部雅大(2年/SG/183cm/國學院久我山高) | 法政大学体育会男子バスケットボール部 YouTubeチャンネル
淺野 ケニー選手(特別指定選手)加入のお知らせ | 三遠ネオフェニックス
三遠がFE名古屋との愛知対決制し8連勝…特別指定・淺野は2ケタ得点で躍動 | BASKETBALLKING
[2024.01.05] B.LEAGUE 2023-24 シーズン 特別指定選手登録(菅野陸選手)のお知らせ | 福島ファイヤーボンズ
第64回関東大学バスケットボール新人戦 大会結果 | 関東大学バスケットボール連盟
米須玲音選手(特別指定選手)加入のお知らせ | 川崎ブレイブサンダース
2度の大ケガを乗り越えた、日本大学の米須玲音の進化と変化「五輪を見て、もう少し上の目標を掲げないといけないと思いました」 | バスケット・カウント
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